会長の時間26 平成26年1月22日(水)

2014-01-22

「毅然とした日本人」2014.01.22

日田ロータリークラブ会長 橋本信一郎

 

昨年の十一月にドキュメンタリー作家の門田隆将さんの講演を聞きました。

 

どの話も素晴らしいお話でしたが、東電福島原発の所長であった吉田昌郎さんの原子炉への海水注入のエピソードをご紹介します。吉田さんに直接インタビュー出来たのは門田さんだけだそうです。

 

あのとき、首相官邸は海水注入による再臨界を懸念して、東電に海水注入をストップするように命じました。

その意を受けた東電の役員から次のような電話が吉田所長にあったそうです。

 

「オイ、吉田。俺だ。海水注入どうした」「やってますよ」「すぐ止めろ」「どうしてですか」「うるせー。官邸がぐずぐず言ってんだよ」

「止められませんよ」と吉田さんが言った瞬間、電話が途切れたそうです。

その短い間に、吉田さんは海水注入の担当班長の机に歩いて、テレビ映像に映らないように「本社からストップの命令が来るだろうが、お前に向かって『ストップ』というが聞くな。どんなことがあっても止めるな」と伝えたそうです。

班長は「ハイ、分かりました」ということで、電話が再開したとき「ストップしろ」「はい」と偽装しながらも、本社の命令に背いて海水を注入し続け、福島原発を鎮静化させました。

 

このことは二ヶ月後に、IAEAの調査が入ることが決まって、初めて吉田さんが東電本社に報告しました。本社は初めて知って仰天したそうです。

 

ストップの命令を出した上司は、東電で役員までなっているのだから平時はエリートと呼ばれる優秀なサラリーマンなのでしょうが、こういう人をエリートとは言いません。真のエリートにはいわゆる「ノーブレス・オブリージュ」高貴なる者の義務があります。

 

もし「海水注入ストップという本社の命令に従う」よりも「日本を救う、国民の命を救う」ことの方が大切だという本義を分かった豪胆な吉田所長と原子炉に突入を繰り返した所員がいなければ、福島原発はチェルノブイリの十倍もの惨事となり、東日本には人が住めなくなったかもしれません。

 

門田さんは、光市母子殺害事件を描いた『なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の三三〇〇日』『この命、義に捧ぐ―台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社)で第十九回山本七平賞受賞。

『死の淵を見た男―吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』『太平洋戦争 最後の証言』などのドキュメンタリーを本にされています。

 

門田さんは、毅然とした日本人は昔も今も沢山いる。

本義を知る日本人、恥を知る日本人のことを後世に書き残したいと話していました。

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