会長の時間5 平成30年8月1日(水)

2018-08-01

日田ロータリークラブ 会長 膳所和彦

ヒトの体液バランスについて

 

最近は日本中いや世界中で異常高温状態が続いており、毎日のようにニュースで熱中症による患者数の増加が報告されています。中には重症例さらに死亡例もあり、決して軽視できない状況です。熱中症予防のためには、なるべく外出せず冷房の効いた部屋で過ごすこと、また水分補給や塩分補給などが勧められています。そこで今日はヒトの体液のバランスについて基礎的なお話しをし、熱中症対策に水分補給や塩分補給が何故必要であるかを説明したいと思います。

ヒトの体液は体重の約60%に相当し(残りの40%は骨、脂肪などの固形成分)、その中の1/3が細胞外液、2/3が細胞内液となります。細胞外液には組織間液、血液(血漿)、リンパ液があります。例えば体重50kgの人では、体液量は約30Lで、そのうち10Lが細胞外液、20Lが細胞内液と言うことになります。細胞外液と細胞内液には、各電解質イオンが存在していますが、外液と内液ではその構成配分が全く異なっています。細胞外液ではナトリウムイオンが140mEq/Lと最も多く、カリウムイオンは4mEq/Lと少なくなっています。一方細胞内液ではナトリウムイオンが15mEq/Lでカリウムイオンが150mEq/Lと多くなっており、その配分が逆転しています。このバランスが細胞活動にとって重要な役割を果たしますが、今回はそのことについては省略します。細胞外液も細胞内液もこのイオン分布によって「浸透圧(水を引きよせる力)」を維持しています。つまりこれら電解質イオンが存在しないと細胞内も細胞外も水を保持できず、干からびるのです。正常状態では細胞内外の浸透圧は同じ値で一定となっています。もし熱中症により異常発汗や不感蒸泄のため脱水状態が急激に誘発され、細胞外液とナトリウムイオンが少なくなると細胞内外の水やイオン分布のバランスが崩れ、細胞障害が誘発されます。脳細胞が障害されると気分不良や精神障害、筋肉細胞が障害されると脱力や筋肉の痙攣などの症状が出現します。この時にナトリウムなどの電解質成分のない水だけを補充すると、摂取された水はまず細胞外液に分布するので、細胞外液の浸透圧が低くなります。つまり水膨れ状態です。そこで水だけではなく、細胞外液と同じ電解質イオン成分、特にナトリウム(塩分)をある程度含む飲料を補充すると、細胞外液の浸透圧が維持され、正常な体液分布が取れることになるのです。熱中症の際に単に水だけでなく、塩分も摂取するようアドバイスしているのはこのためです。ちなみに大塚製薬から発売されている「OS1」はナトリウム40mEq/L、カリウム20mEq/L、グルコース1.8g/Lが含まれており、脱水の治療には比較的有効だと思われます。

皆さん、今後も暑い日が続きそうです。熱中症にならないように十分な休息をとり、そして水分と塩分補給を行って下さい。

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