会長の時間37 平成26年4月9日(水)

2014-04-09

「台湾訪問の前に」2014.04.09

日田ロータリークラブ会長 橋本信一郎

 

今月の二十三日には嘉義玉山ロータリークラブ十五周年のお祝いに、当クラブから九名が台湾を訪問します。そこで昨今の台湾の政治状況を話したいと思います。

台湾で学生が日本の国会に当たる立法院を占拠していたことをご存じだと思います。

これは中国と台湾が一層の市場開放を目指して昨年六月に調印した「サービス貿易協定」の承認を阻止するためです。

 

「サービス貿易協定」とは、医療や金融、建設などの市場を相互に開放し参入を容易にしようとするものですが、これは台湾経済の主体である中小企業に大打撃を与えるばかりか、中国から大量に投資移民を呼び寄せ(十年間で百万人が移住するとの推計も)、台湾を経済的に中国の勢力圏内に組み込み、併呑を加速させるものです。

 

しかし、このことを国民が知ったのは、何と調印された後でした。
つまり、馬英九政権はこうした重大なものを国民の預かり知らない密室作業で調印し、国会でも野党と世論の猛反対をよそに強行採決に踏み切ろうとしたため、協定撤回を求める学生などが三月十八日以来、国会の議場や周辺の道路を占拠したのです。

三月三十日に総統府前で行われた座り込みデモでは全国から五十万人が参加したそうですが、これだけ多くの人が集まった背景には、台湾が台湾でなくなることへの台湾人の懸念や恐れがあるからだ思われます。

 

もっと根本には、戦後以来の、台湾人の中国人への不信があると思います。さらに、中国人と実際に接触する機会が増えた今日、世論調査でも、我々は中国人ではないという人が八十五%を占めています。

中国の非民主的、非人権的姿勢や、香港の自治権を認める約束を反故にしたことなどで、その思いははっきりしてきています。

 

台湾には、戦後、大陸から蒋介石とともに進駐してきた外省人と呼ばれる一五%の中国人と、戦前から台湾に住んでいる八五%の本省人と呼ばれる台湾人がいます。

 

外省人は中国人の意識が強く、台湾人は中国人としてよりも台湾人としてのアイデンティティがますます強くなっています。

 

例えば、国会を占拠する学生らを恫喝するため、ヤクザが率いる約千名のデモ隊が押し寄せ「お前らに中国人である資格はない」「中国はお前らを必要としない」と怒声を上げたら、学生たちは「私たちは台湾人。もともと中国人ではない」と笑い飛ばしたそうです。

 

四月六日、王金平立法院長(国会議長)が占拠後初めて議場を訪れ、中国との協定を監視する新法の制定まで協定の審議を再開しないと明言し、学生らの要求に歩み寄る姿勢を示しました。

 

学生らは「この段階での任務を達成した」と評価し、国会から退去することになりました。

 

しかし、事態はこれで収まるかというと、私はそう簡単にはいかないのではないかと思います。

 

このまま学生の要求を認めれば、中国の狙いは頓挫します。まして、中台関係を「国と国」の関係とすれば、中国の戦略は根本から崩れます。

中国人はうまくいかなければ恫喝、あるいは力で強行してくる可能性があります。

 

今回の台湾の学生や市民の運動は、対中国という東アジア全域の共通した潮流の一つと言えるかもしれません。

 

中国がどう出て来るか、今後、注視する必要があります。

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