会長の時間10

2020-10-14

日田ロータリークラブ会長 井上太香美


今日は文学的なお話をします。先日岩手県に行ったことをお話しましたがその続きです。
岩手県は歌人石川啄木の生まれ故郷です。若かりし頃、歌集「一握の砂」に魅了され、いつか彼の生誕の地である渋民村(現 盛岡市)を訪ね、その息吹を感じてみたいと願っていました。盛岡駅の駅舎の正面口には「啄木」という文字が掲げられており顕彰されています。
私は短歌が大好きです。ロータリーの友や新聞雑誌の歌壇を見て感激したり、憤ってみたり、自分で詠んで自己満足したりしています。短歌は万葉の昔から、貴賤を問わず31文字(みそひともじ)で心の機微や情景を表現できる文学で、世界に誇れるものではないでしょうか。
石川啄木の歌集一握の砂は、その中にある作品の一つ「命なき砂の悲しさよ さらさらと 握れば指の 間より落つ」からとった表題です。この歌集の作品はどれも写実的で、私自身の実体験として感ずるものが多く、時には励まされこともありました。疲れたときは、「はたらけど はたらけど 猶わが暮らし楽にならざり ぢっと手を見る」ということもありました。 「石をもて 追はれるごとくふるさとを いでし悲しみ消ゆることなし」生活が破綻すればこうなるぞと自分を戒める詞でありました。「ふるさとの山に向かひて言ふことなし ふるさとのやまは ありがたきかな」という作品は帰省の度に感じました。「ふるさとの訛りなつかし停車場の 人込みの中に そを聞きに行く」都会に出て聞くふるさとの訛りは涙が出るほど懐かしいものです。友人たちに取り残されたような気がした時には、「友がみな 我よりえらく見ゆる日よ 花を買いきて妻と親しむ」というのを実践したことがあります。「たはむれに 母を背負ひてそのあまり 軽きに泣いて3歩歩めず」は誰しも感ずるところがあると思います。彼の生活態度については、様々な批判がありますが、いずれにしても思うに任せぬ生活を表現した歌には、共感できる面が多くあります。彼が見たであろう渋民村の情景は、聖地を訪れたかのような深い感動を与えてくれました。

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